
オーディブルで聴くのと、紙の本で読むのでは、どちらが頭に残るのだろうか。
そんな疑問が湧いてきたので、同じ本の同じ章を使って実験をしてみた。
条件はシンプルだ。
オーディブルも紙の本も、1つのパートを一度だけ聴く(読む)。どちらも、その直後に記憶を頼りに要約を書く、というものだ。
結論として、
要旨を掴む力という点で、オーディブルは紙の本と遜色がない
ということが分かった。
この記事では、実験の結果と、そこから見えてきた「オーディブルの特徴」、そして「どんな使い方が最適」か、を整理していく。
実験の内容と結果

実験の条件
今回の実験内容を改めて紹介する。
同じ本の同じパートを、オーディブルも紙の本もそれぞれ一度だけ読み(聴き)、その直後に記憶を頼りに要約文を書く。
順番は、まずオーディブルで聴いて要約を書き、3日ほど間隔を空けてから、紙の本を読んで再び要約を書く。なるべくフェアにするために、読む(聴く)日は意図的に離している。
今回読んだ本は、「金儲けのレシピ」(実業之日本社)だ。
この本を選んだ理由は、
- 自宅にある本の中で、オーディブル版も配信されている
- 1年以上前に読んだ本であり、内容をほとんど覚えていない
という条件に合致するからだ。
読んだ時期が最近ではないほうが、今回の比較をより公平にできると考えた。
対象としたのは、本の冒頭にあたる「まえがき」。著者の考え方が端的に示されている部分だ。この一章を通して、耳で聴く読書と目で読む読書の違いを、自分の記憶を通して比べてみる。
実験の結果

下記に実験の結果(要約文)を紹介する。
まずは、オーディブルを聴いた直後に書いた要約文だ。
◆オーディブルを聴いた後に書いた要約文
筆者は、自身で事業を成功させた経験から、成功するビジネスは15の型に分けられることに気づいた。
ビジネスはこうすれば成功する、というものではない。しかし儲けるための近道は、儲からないビジネスを知ることで、失敗を防ぐことはできる。
まず、誰でも簡単に儲かるビジネスは存在しないということを知っておくこと。
また、初期投資が大きいビジネスや自分が詳しくない領域のものも失敗しやすい。
資本主義において、金儲けこそが最強のスキルである。資本主義に生きてる以上、この金儲けのスキルを伸ばすことを意識して生きていくのが懸命だ。
次に、紙の本を読んだ後に書いた要約文だ。
◆紙の本を読んだ後に書いた要約文
著者は、複数の事業をしてきたが、その経験から、ビジネスは15の原理原則があることが分かった。ビジネスは水物なので必ずこれをやれば上手くいくというものではないが、原理原則のようなものはある。
昔、出資を受けていた人に頂いたアドバイスから、経営者とはたまたまその領域に詳しいだけでビジネスに詳しい訳ではない、ということに気づいた。と同時に、自分でビジネスの原理原則を見つけようと思い始めたのだった。
ビジネスで成功するためには、まず、儲からないビジネスについて知っておく必要がある。
まず、誰でも簡単に設けられるビジネスはない。ビジネスは供給よりも需要が多いから儲かるという構造だ。誰でも簡単に儲かるなら供給が需要よりも増えてしまい、儲けの構造が崩れてしまう。
初期投資のかかるビジネスは良くない。飲食店などの店舗ビジネスがその代表と言える。
自分が詳しくないビジネスも良くない。別にその領域で仕事の経験がある、ということに限らない。ブルーボトルコーヒーの創業者もコーヒー好きが講じて始めたものである。金儲けは最大のビジネススキルである。資本主義社会においては、
金儲けのスキルはパワーポイントで資料など作るよりもよっぽど重要なスキルである。仕事ができるとはお金が稼げるということである。
要約文の違いを比べてみる

オーディブルと紙の本で書いた要約を並べてみると、いくつかの違いが見えてきた。どちらも内容の方向性は同じだが、要約文に含まれている情報の量や構成に違いがあった。
オーディブルの要約文は、主張や結論といった要点を中心に簡潔にまとめられている。
一方、紙の本の要約文には、著者がその考えに至った経緯や、背景・具体例といった文脈的な情報が含まれていた。
たとえば、
オーディブルの要約文では「儲からないビジネスを知ることで失敗を防げる」とまとめていたが、紙の方では「なぜ儲からないのか」「供給と需要の関係」といった説明まで書かれていた。
また、オーディブルの要約文では「初期投資が大きいビジネスや詳しくない領域は失敗しやすい」とだけ触れられていたのに対し、紙の方の要約文には「飲食店のような店舗ビジネス」や「ブルーボトルコーヒーの例」など、具体名を伴った内容が含まれていた。
全体として、
- オーディブルの要約文は要点を押さえた構成
- 紙の本の要約文は背景や具体例など文脈を含んだ構成
になっている。
ここからオーディブルを使った「聴く読書」の特徴が見えてくる。
オーディブルを使った「耳から読書」の特徴

今回の実験から分かったのは、紙の本と同じように、オーディブルでも要点を押さえて全体像を掴めるということだ。一方で、細かい背景や具体例までしっかり定着理解したい場合は、紙の本の方に軍配が上がる。
私自身、普段からオーディブルを聴いているが、この結果には納得している。著者の主張を補強するための具体例やエピソードは、どうしてもボリュームが大きくなり、すべてが頭に残るわけではない。(もっとも、1回しか読まないのであれば、紙の本でも定着は難しいと思うが)
そしてこの結果から、オーディブルの適した使い方が見えてくる。
オーディブルの特徴を活かした使い方
多読を目的とした使い方

オーディブルは、圧倒的に紙の本より「読みやすい」。本を開かずに耳から聴ける手軽さが最大の魅力だ。そして今回の実験で、要点を押さえる点では紙の本と遜色がないことも分かった。
つまり、たくさんの本を聴き、要点を把握しながらインプットする──そんな「多読」の目的にとても向いている。
さらに、オーディブルには聴き放題対象の作品が豊富にある。興味のあるテーマを次々と聴いていくことで、自然と知識の幅が広がっていく。それが通勤時間や作業中にできる、というのがポイントだ。効率的に多読したい人にとって、オーディブルは最適な選択肢だ。
「考え方」のインストールを目的とした使い方
繰り返しになるが、オーディブルは本の要点を捉えるのに向いている。それはつまり、具体的な事例よりも抽象的な考え方そのものを学ぶのに適しているということだ。
たとえば、今回実験に使った『金儲けのレシピ』で言えば──
- 誰でも簡単に儲かるビジネスはない
- 初期投資の大きいビジネスは失敗しやすい
- 自分が詳しくないビジネスは失敗しやすい
のような、原理原則や考え方の部分である。
具体的に「何」をやるかは自分で考えるとしても、どんな「考え方」でビジネスを選択すべきかが、繰り返し聴くことで定着していく。こういった、「考え方」のインストールにオーディブルはとても向いている。
感情の機微を味わう使い方

これは今回の実験とは直接関係ないが、オーディブルを使っていて感じた、紙の本にはないメリットをひとつ挙げたい。
それは、登場人物の感情がよりリアルに伝わってくるということだ。
紙の本では、セリフを目で追っていても、脳内で再生される声はどこか平坦で、現実感が薄い。
一方オーディブルでは、ナレーターの声を通じて感情の揺れが直接届く。怒り、ため息、少しの間——そうした「声の温度」が、登場人物の心を立体的に浮かび上がらせる。
読書の良さとは、読んだときに生まれる心の揺れ、その振れ幅の中にある「言葉にならない感情」だと思う。
紙の本よりもオーディブルのほうが、それを感じやすい。
オーディブルで聴くのに向いている、おすすめのジャンル
ここまでの内容と、私自身の体験を踏まえると、オーディブルで聴くなら下記のようなジャンルがおすすめだ。
- 自己啓発書
- ビジネス書(考え方メインのもの)
- 小説
- エッセイ
ビジネス書でも、具体的なハウツーが多いものは紙の本の方が良い。手順を確認しながらアウトプットするタイプの本(例:「アウトプット大全」など)は、実際に目で追いながら読むほうが理解しやすい。
まとめ
オーディブルの特徴は、
- 紙の本よりも気軽に読める(聴ける)
- 要点の把握という点で、紙の本に劣らない
この2点にある。そしてこれらの特徴を活かし、
- 多読
- 考え方のインストール
- 人の心の動きを学ぶ
などに向いている。
さらに、これらが通勤時間などのスキマ時間でできるというのが最大の魅力だ。これは、紙の本では決して実現できない読書体験である。オーディブルは、日常のちょっとした時間を、簡単に、少し豊かにすることができる。
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