「スマホ時代の哲学」の要約と感想|「考える時間」を取り戻すためのヒント

気づいたらスマホを見ている。

そんな自分に少し嫌気がさしていたときに、この本に出会った。

かみ砕きにくい部分もあり、難しいところもある。

それでも、読んでよかったと思える学びがたくさんあった。

 

この記事では、実際に本書を読んだ私が、

  • 書かれている内容の要約
  • どんな人におすすめか
  • 印象に残った一節とそこから考えたこと(感想)

を順に紹介していく。

 

 

「スマホ時代の哲学」をギュッと要約(約800字)

スマホやSNSの普及によって、あらゆる人・商品・イベントが「注意を奪う」よう最適化され、私たち自身もSNSで発信することで、その奪い合いに加担している。そんな「常時接続」の世界がもたらしたものは、希薄な人間関係、「つながっていても一人ぼっち」という状況だ。

 

そうなった理由は、「常時接続」によって〈孤立〉〈孤独〉を確保ができなくなっていることが根底にある、と著者は考える。

 

〈孤立〉とは、何かを成し遂げるために不可欠な「誰にも邪魔されない時間」を指し、集中して取り組むとき、そこに他者は介在しない。

〈孤独〉とは、その〈孤立〉の中で、自分の中にある複数の声と静かに対話するように「思考」している状態である。

 

孤独は、自分を深く知るきっかけになる。しかしスマホやSNSによる絶え間ない注意の奪い合いは、現代において孤独の確保を極めて難しいものにしている。

孤独が欠けていることで、自分の感情や感覚を理解できない状態が生まれ、さらにその延長として他者の感情理解をも難しくしてしまう。

SNSで繰り返される即時的で短い応答は、他者理解に本来必要な「時間」を奪い、その環境に慣れるほど、私たちは他者への想像力も失っていく。

 

こうした背景のもと、本書は「何かを作る・育てる」という趣味を持つことを勧めている。創作には模索や探索が伴い、その過程が孤独を生み、自分を育てていく契機となるからだ。

作品や道具といった「物」を介して対話し続ける中で、自分が作っているものの意味や方向性(創作ビジョン)が徐々に形を持ち、それとともに自分自身への理解も深まっていく。

 

よりよいものを作ろうとする試行錯誤、同じことを何度も繰り返す反復、「自分が良い」と思えるまで手をかけて作り直す姿勢。これらは、自分との対話を深め、自分を育てる営みである。

 

いつでも関係を切ることができる同調的なじゃれあいが悪いわけではない。

しかしスマホ時代においては、孤独を経由してこそ、適切なつながりが可能になる──これが著者の主張である。

 

この本はどんな人におすすめか

この本は、スマホが生活の一部にまで浸透した現代において、「スマホ時代にどう生きるべきか」という疑問を、哲学という分野から考える一冊である。

購入前はもう少し生活寄りの読み物を想像していたが、実際にはしっかりと哲学の本だった。耳の痛い話も、難解な箇所も多く、読み応えがある。

 

スマホやSNSとの距離感に悩んでいる人

スマホばかり触っている自分に違和感がある人には、本書は向いている。

スマホがもたらしたもの、奪ったもの。その両方を踏まえながら、どう向き合うかを考えるきっかけになる。


将来が不安な人

スマホの登場によって、現代では自分と向き合う時間が減っている。

自己対話の時間がなければ、「自分がどう生きたいのか」も見えにくい。本書を読むことは、自分を理解し、未来への一歩を踏み出すヒントになる。


哲学に興味がある人

哲学を現代社会と結びつけて語っているため、抽象的すぎず、具体的な問題意識と一緒に学ぶことができる。

哲学に興味はあるが、何から始めればいいかわからない人にとっては、最初の一冊としてちょうどいい入り口になる。

 

印象に残った一節

学ぶときに陥りがちな思考のクセ

学ぶことの難しさについて、本書では下記のように述べている。

 

何かを学ぼうとする大半の人は、学んでいる内容を安易に「自分のわかる範囲」に落とし込むからです。

スマホ時代の哲学 p89より引用

 

これはかなり自分のことを言い表しているなと感じた。

 

私は未知のものに出会ったとき、これまで培ってきた知識を組み合わせて推論を立て、最終的には「自分が理解できる形」へと噛み砕こうとする。

その思考の仕方こそが、「自分の想像力の範囲内で物事を捉えている」という事実を、この一文は突きつけてくれた。

 

Xで以前見かけたポストに、「目標は自分が想像できないくらい大きなものがいい」というものがある。想像できる目標は、結局は到達可能な範囲に収まってしまうからだ。だからこそ、成長のためには「自分の外」にあるような目標を掲げることが大事だ、という趣旨だったと思う。

 

この二つから見えてくるのは、人は自分の理解できる範囲で物事を考えてしまうクセがあるということだ。文字にすると大げさに聞こえるが、自分にも心当たりがある。

 

別の分野から同じことを見ると、急に腑に落ちることがある。この件もそうだった。

 

大きな目標を掲げると、今の自分では届かない部分がはっきりする。すると、既存の枠組みのままでは前に進めないことがわかるため、新しいことを受け入れやすくなる。目標の大きさが、自分の枠組みを壊すきっかけになる。

 

「ブログを収益化する」という目標を立てたが、今のままでは難しいということに最近気づいた。だからこそ、世の中で「大切」と言われている基本的なことを愚直にやってみようと思い始めていた。その矢先に出会った言葉だった。

 

書くことで自分が見えてくる

本書は「何かを作る、育てる」という趣味をすすめている。それが自分の理解につながるからだ。

 

この本を書くプロセスもそうでした。漠然としていた目的や関心、テーマが、繰り返し書き直し、捨て、継ぎ合せ、再編成するという探索プロセスの積み重ねによって、次第に明確な方向性を帯びていきました。

スマホ時代の哲学 p199より引用

 

著者自身も本書の執筆を通じて、「自分が言いたかったこと」が見えてきたと言っている。この感覚は、ブログを書くときにも当てはまる。

書く前にテーマを決めていても、書いているうちに「これはどういう意味で書いているのか?」といった疑問が湧き、そのたびに自分に問いかけることになる。

 

書いて、読んで、書き直す。それを納得いくまで繰り返すことで、自分が理解できてくる。ブログは、本書でいう「趣味」として案外うってつけなのかもしれない。

 

まとめ

自分の中に安易に答えを見つけようとせず、把握しきれない謎をそのまま抱えておくことで、そこから新しい何かをどこまでも汲み取ろうとすることは、哲学や人文知を通して身につけられる姿勢だと思います。

スマホ時代の哲学 p217より引用

 

この一文が示す通り本書には、読んでも理解できずにいる部分がそれなりにある(それは私の理解力の問題かもしれないが)。


ただ、その「分からなさ」も含めて留めておくこと。

安易に解決しようとせず、時間と不安と一緒に醸成していくことが深みに繋がる──本書はそう述べている。


ならば私も、このモヤモヤとしばらく付き合ってみようと思う。

 

最近は、すっきり読める本ばかり手に取っていたぶん、少し難解な部分が逆に新鮮で、深く自分に問いかける時間になった。とても良い読書体験だった。

こうした読後感を味わってみたい方は、ぜひ一度本書を手に取ってみてほしい。

 

書籍情報

増補改訂版 スマホ時代の哲学 「常時接続の世界」で失われた孤独をめぐる冒険(著:谷川 嘉浩)

ディスカバー・トゥエンティワン

  • 2025年4月18日 第1刷発行
  • 2025年10月28日 第6刷発行
  • 累計8万部突破(帯に記載あり)

※記事執筆時点の情報です。

 

 

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